
みなさんおひさしぶりです。脱サラ編入医学生のシュンです。
先日金沢大学の過去問を請求して見ました!
そのため、今回はその過去問の模範解答・解説を行おうと思っています。
金沢大学は例年”いい問題”を作る大学として知られています。
- 生命科学の知識が十分あること
- きちんと考察できること
- 日本語でアウトプットができること
これらができないと金沢大攻略は厳しいでしょう。
さて、前置きはさておき、早速問題に取り掛かりましょう。今回は問題Ⅰの問1〜4までを解説していきます。
(尚、著作権の関係上、文章を改変しておりますが、大筋では変わっていませんので安心を^^)
問1.Ⅰ型膜タンパク質について間違っているものはどれか
- N末端にシグナル配列がある
- C末端側が細胞質にある
- 細胞膜に局在する
- シグナル配列は疎水性アミノ酸残基からなる
- 2回膜貫通タンパク質である
模範解答.5
膜タンパク質の問題です。膜タンパク質とは細胞膜上に組み込まれているタンパク質のことでしたね。ここで1型膜タンパク質という聞きなれない分類が出てきました。
1型とは1回膜貫通タンパク質(+N末端側が外側)のこと。つまり、この時点で5番は間違いということになります。1型=1回膜貫通と知らなければ厳しい問題でしょう。
他の選択肢も見ていきましょう。
- N末端にシグナル配列がある
その通りです。mRNAが翻訳されてタンパク質が合成されますが、その時N末端側から合成されていきます。そのため、
- C末端側が細胞質にある
その通りです。”N末端側から翻訳” され ”膜を1回だけ貫通する”と考えたらC末端側が細胞質側に来るのは当然ですね。ちなみに2型の膜タンパク質ではC末端側が外側、N末端側が細胞質側に来るようです。
- 細胞膜に局在する
膜タンパク質とは細胞膜に局在するからそう呼ばれるのです。しかし、細胞膜と小胞体・ゴルジ体の膜はお互いに輸送されています。そのため、厳密には正解ではないのかもしれません。しかし常識的に正解でしょう。
- シグナル配列は疎水性アミノ酸残基からなる
これは、Essential細胞生物学に明確に記載されています。小胞体に輸送される膜タンパク質には8個以上の疎水性アミノ酸からなる小胞体シグナル配列が存在します。しかし、一般的にシグナル配列は切断されてしまいます。そのため、膜タンパクとして機能する時にはすでにシグナル配列は切断されてしまっています。
問2.標準遺伝コードについて間違っているものはどれか
- AUGは開始コドンである
- UAAは終止コドンである
- 終止コドンは1種類のみである
- 縮重におけるコドンの違いは3文字目で主に見られる
- 標準遺伝コードに従わない生物種が存在する
模範解答.3
標準遺伝コードという呼び方を初めて聞きましたが、問題を見る限りmRNAの遺伝暗号のことを言っているようです。終止コドンはUAA,AGA,UAGの3つです。
KALSの生命科学の先生は、野々村議員の叫び声
「うああ〜〜!うがあ〜〜!うあぐ〜〜!で人生が終止コドン」
と覚えるようにと言っています。ものすごく覚えやすいので、皆さんもどうぞ^^(野々村議員を知らない方はコチラ)
他の選択肢も見ていきましょう。
- AUGは開始コドンである
その通りです。ちなみに開始コドンとして用いられる他、メチオニンもコードしているので覚えておきましょう。
- 縮重におけるコドンの違いは3文字目で主に見られる
縮重とは、1つのアミノ酸に対して複数のコドンが存在することです。
例えばCCT,CCC,CCA,CCGは、すべてプロリンをコードしています。このように、コドンの3文字目が多少変わっても同じアミノ酸がコードされることが多いのです。
これが成り立たないのは、メチオニン(ATG)とトリプトファン(TTG)であり、1種類のコドンでしかコードしていないことは覚えておきましょう。
- 標準遺伝コードに従わない生物種が存在する
これはミトコンドリアDNAなどが有名です。しかし、それ以外にも一部の原核生物でも部分的に異なるコドンが使用されるそうです。
そもそもミトコンドリア自体が大昔は原核生物だったことを考えると、現存する原核生物も同様に異なるコドンを使用するものもいて良いですね。
問3.遺伝子変異について正しいものを選べ
- 体細胞変異は遺伝する
- 欠失してもアミノ酸配列に影響はない
- 同義置換はアミノ酸に変化がない置換である
- ナンセンス変異はアミノ酸置換を生じる変異である
- ミスセンス変異は終止コドンを生じる変異である
模範解答.3
同義変異とは、塩基配列が変化してもコードするアミノ酸が変わらない変異のことです。ちょうど前の問題に出てきた「縮重」によるものが多いですね。
他の選択肢についても見ていきましょう。
- 体細胞変異は遺伝する
体細胞の変異は遺伝しません。精子や卵などの生殖細胞に起こった変異は次世代に遺伝してしまいます。
- 欠失してもアミノ酸配列に影響はない
欠失は塩基が抜け落ちることです。
例)AAATTTCCC→AAATTCCC
塩基は3文字セットで翻訳されるため、欠失が起こった場所は正しい3文字とならなくなり、本来のアミノ酸とは違うアミノ酸をコードしてしまうこともあります。
- ナンセンス変異はアミノ酸置換を生じる変異である
ナンセンス変異は、アミノ酸置換を生じない変異のことです。
- ミスセンス変異は終止コドンを生じる変異である
終止コドンを生じる変異はターミナル変異と呼ばれています。
ミスセンス変異とは異なるアミノ酸をコードしてしまう変異のことです。ちょうど選択肢の2番の正しい答えになっていますね。
問4.タンパク質の翻訳について、正しい記述はどれか
- 核内のタンパク質は核内で翻訳される
- mRNAにおけるCap構造は3’末端に見られる修飾構造である
- 翻訳開始因子eIFsのうち足場となる分子はeIF4Gではない
- ウイルスの翻訳はeIFの一部が必要ない場合もある
- 1〜5のどれでもない
模範解答.4
1,2と3,4で知識レベルに大きな差がある問題です。これは本当に1人の先生が作ったのでしょうか?
ウイルスは宿主細胞に侵入し、翻訳機構を乗っ取ることは有名です。しかし、その分子機構を詳細に知っている人はなかなかいないでしょう。実際は消去法+1/2のギャンブルで解く問題かもしれません。
本来、真核細胞ではmRNAが翻訳される際には、mRNAのキャップ構造とeIF4Eと呼ばれる翻訳開始因子が結合しなければなりません。
しかし、ウイルスゲノムにはキャップ構造がないものもたくさんあります。そのためeIF4Eと結合することができません。
しかし、その代わりウイルスゲノムにはVPgというタンパク質を結合しているものがあります。このタンパクを持っていると、なんとeIF4Eと結合しなくても、他の翻訳開始因子と結合できるのです!
というわけで、eIF4Eが必要ない(場合もある)から4番が正しいですね。しかし、すべてのウイルスで同じかと言われるとうそういうわけでは無いようです。
他の選択肢についても見ていきましょう
- 核内のタンパク質は核内で翻訳される
膜タンパクや分泌タンパクと同様に、リボソームで翻訳されます。その後核輸送シグナルの働きで核に送られます
- mRNAにおけるCap構造は3’末端に見られる修飾構造である
3’末端に見られるのはポリAテールです。Cap構造は5’末端ですね^^
- 翻訳開始因子eIFsのうち足場となる分子はeIF4Gではない
eIF4Gは「足場因子」として知られているようです。文章の書き方的に怪しい選択肢ですね。

今回はここまで!
今後、続きの模範回答を作りますので乞うご期待!!